山形地方裁判所 昭和53年(行ウ)3号 判決 1982年3月01日
原告 高橋嗣明
被告 天童市長
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の申立
一 原告の申立
1 被告が昭和五三年五月一五日付同年度固定資産税、都市計画税納税通知書をもつて原告に対してなした別紙物件目録記載の各土地(以下、本件土地という)に係る固定資産税並びに都市計画税の賦課処分は取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
二 被告の申立
主文同旨の判決を求める。
第二当事者の主張
一 原告の請求原因
1 本件土地は原告の所有物件であるところ、被告は昭和五三年五月一五日付同年度固定資産税及び都市計画税納税通知書をもつて、原告に対し本件土地に係る同年度固定資産税二一万〇四〇〇円及び都市計画税九万二二七〇円の各賦課処分をなした。
2 しかしながら、右賦課処分はその計算方法において左の理由により違法なものである。
(一) 昭和三九年以来とられて来た住宅用地についての税負担調整措置は、昭和三八年度の土地評価額に基礎をおくものであるから、本件で取消を求めている昭和五三年度固定資産税、都市計画税の適否を検討するには昭和三八年にさかのぼる必要がある。
(二) しかし、前記のような検討は甚だ繁雑となるので、ここでは昭和四八年度以降における本件土地につき天童市がとつた固定資産税の賦課方法の範囲で検討することとする。
(1) 昭和四八基準年度における本件土地の評価額は、二一四三万八二六〇円である。
(2) 昭和四九年一月一日から昭和五三年一月一日までの間、本件土地上の建物には、地方税法三四九条の三の二第二項第二号の適用をうける住居が六戸存していた。
(3) よつて、本件土地一一三七・六一平方メートル全部が小規模住宅用地の特例措置を受け、昭和四九年度の固定資産税課税標準額は五三五万九五六五円である。従つて、昭和五〇年度も同標準によるべきものである。
(4) 昭和五一基準年度の評価額は二五七二万五九一二円である。従つて、同年度の本件土地の本来の固定資産税課税標準額は六四三万一四七八円である。
(5) 昭和五一年から同五三年度課税標準を計算するための上昇率は前記の金額を(3)に記載の五三五万九五六五円で除した商が一・二であるから一・一である。
(6) よつて、昭和五三年度の固定資産課税標準額は昭和五〇年度の課税標準額五三五万九五六五円に一・一を三回連乗した七一三万三五八〇円である。
(7) これに一〇〇分の一・五の税率を乗じた一〇万七〇〇〇円が昭和五三年度の適法な固定資産課税額である。
3 よつて、原告は昭和五三年七月一〇日、被告に対し不服申立をなしたところ、被告は同年八月八日付書面で右異議申立を棄却する旨決定したので同年一〇月一四日本訴に及んだものである。
二 請求原因に対する被告の答弁及び主張
1 請求原因1、3項の事実は認めるが、同2項の主張については争う。
2 本件土地に対する昭和五三年度の固定資産税及び都市計画税は、別表「昭和五三年度固定資産税及び都市計画税に係る課税標準並びに税額の算定」において記述のとおり地方税法及び天童市市税条例の規定によつて、土地課税台帳に登録された価格を基礎として適法に算出したものであつて、適否を検討するに昭和三八年にさかのぼる必要はない。
原告は、昭和三八年度の土地評価額をうんぬんするようであるが、地方税法第四三二条第三項により本訴において右事項を争うことができない。
3 原告は、地方税法三四九条の三の二第二項第二号の小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準の特例を本件土地に適用すべきことを主張するが、右事項に関し不服があれば地方税法四三二条一項により固定資産評価審査委員会に審査の申出をすべきであり、本訴において右事項を争うことは同条三項により許されない。
すなわち、地方税法三四九条の三の二の規定による課税標準とすべき金額は、同法三八一条六項により固定資産課税台帳の登録事項であるところ、同法四三二条一項により、右登録事項に不服がある場合においては、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができることになつているので、同条三項により固定資産税の賦課についての不服申立においては、右一項の規定により審査を申し出ることができる事項についての不服を当該固定資産税の賦課についての不服の理由とすることができないのである。
また、地方税法附則二八条五項により課税標準額を争うことは許されない。
三 被告の主張に対する原告の反論
1 被告は、地方税法三四九条の三の二第二項の小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準の特例の適用につき不服ある場合には、同法四三二条一項により固定資産評価審査委員会に審査の申出をするべきであると主張しているが、この主張は理由がない。
同法四三二条一項は、固定資産課税台帳に登録された事項について不服ある場合は固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができると規定しており、同法三八一条一項には、固定資産課税台帳の登録事項は不動産登記法七八条に規定する登記事項及びその土地にかかる基準年度の価格であることを定めているのみで、被告が指摘する小規模住宅地特例の適用による課税標準額はその登録事項でない。従つて、右の事項は固定資産評価審査委員会に審査申立すべき事項ではない。
2 また、被告は前記小規模住宅特例措置に関する事項は地方税法付則二八条五項により課税標準額を争うことは許されないと主張するが、この主張は法の誤解によるものであり、理由がない。
第三証拠<省略>
理由
一 請求原因1、3項の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで検討するに、昭和五三年度における土地課税台帳に登録された本件土地の価格は被告主張(別表一頁記載)のとおりであることは弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。右価格を基礎として地方税法及び天童市市税条例(成立に争いがない乙第三、四号証)に則り、本件土地の同年度の固定資産税及び都市計画税を算出すれば、別表記載のとおりの経過を辿り、これに違算はないものと認められる。
一方、原告は請求原因2項において本件土地の固定資産税額につき独自の算出根拠を示すが、右は要するに本件土地上に小規模住宅用地に対する課税標準の特例(地方税法三四九条の三の二第二項)の適用を受けるべき住居数が六戸ある(被告は一戸とする)ことを前提として課税標準額を算定すべき旨主張するものである。
しかしながら、小規模住宅用地の特例措置を受ける固定資産については、当該固定資産に右特例を適用した結果得られた金額を土地課税台帳に登録すべき旨定められているところ(地方税法三八一条六項)、右登録事項に関して不服がある固定資産税の納税者は所定期間内に固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をすることができ(同法四三二条一項)、さらに右決定に不服があれば同委員会を相手としてその取消訴訟を提起することができるが(同法四三四条一項)、反面、右審査申出及び取消訴訟以外の方法によつて右事項に関する争いはできないものとされているから(同条二項)、当該固定資産税の賦課処分取消訴訟において右事項に関する違法事由を主張することは許されないものと解される。従つて、原告の右主張は採用に由ない。
三 以上によれば、被告のなした本件土地に対する昭和五三年度の本件各賦課処分は適法なものというべきである。
よつて、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 武藤冬士己 下澤悦夫 島本誠三)
別紙物件目録及び別表<省略>